あの日の朝のことを、私はずっと覚えています。
実は、その日のことを当時の私はアメブロに書いていました。
今回は、そのときの記事をそのまま載せます。
今読み返してみると、
そこにいるのは、当時を思い返す「今の私」ではなく、あの日の私でした。
※この出来事の前日の記事はこちらです。
👉【慶應義塾高校】「留年です」と言われた朝のこと
留年する意思を伝えに向かった朝
今から向かうのは、悲しき三者面談。
この世の終わり街道を、車で走る。
行き先は絶望。
かと思いきや、
車内では、
私の大好きな80年代アイドル曲と、
そらまるが大好きな海外のゲーム解説が
英語で流れているという、
なかなかカオスな空間であった。
松田聖子さんの「夏の扉」が流れはじめると
私は、思い出し笑いをしながら
そらまるに話しかけた。
「そういえば、
そらまる、この歌を
いとうあさこさんの歌だと思ってたよね(笑)」
※ウインナーソーセージのCMで、いとうあさこさんが
「夏の扉」をバックに新体操で踊っていたことから。
「あー、うん。」
というような
微笑ましい会話をしたかと思えば、
次は嘆き始める。
「はあー。
この1年、クラスの中で
ママが1番、担任の先生と会ってたな…
はあー。行くのやだなー。」
※我が家は、最初から成績不振だったため。
「ま、でも!
こうなった以上は前向きにいこう!ね!」
1人嘆き、1人解決。
すると、母の言葉など
全くスルーのそらまるが
「帰り映画観て帰るわ。」
などと言い出した。
「え、なんの映画?」
「んー、まだわからん。」
「ふーん、わかった。」
いつも通りの会話。
いつも通りの親子。
こんなにもどんより感ゼロであることが、
なぜだか不思議なまま、学校へ到着した。
息子が選んだ答え
担任に深々とお辞儀し、教室へ入ると
三者面談が開始された。
今回の結果を見せられながら、
5後半に届かなかった為、
留年となった説明などを受ける。
「君にとって
興味のない授業だらけかもしれない。
でも、それらを学ぶことが
塾高のカリキュラムだ。
そこは割り切って、勉強する必要がある。
次は自分のやり方を見直して、
授業聞き、復習をしてれば、絶対大丈夫。
苦手な教科は、質問に行けばいい。
そういう積極性が必要なのです、この学校は。
そういうことが、大学でも必要になる。
高校での時間は、その練習期間なのです。
先生や友達を頼ることが大事。
それをまるでしなかった自分を
変えてみて欲しい。
新1年生の教科書、もう売店にあるから
春休み中に目を通しておくといい。
まあ、範囲は先生によるけれど。
でも、中身を理解しておくと
勉強自体が楽しくなるからね。」
背筋を伸ばし、真っ直ぐな瞳で
担任を見つめるそらまる。
聞いてる風は、天下一品なのである。
その横顔を見ながら、
何も聞いてないんだろうなあ…
と思う母。
「君はどう考えてるのか、本音言ってよ。」
「ここでやり直したいです」
面談は、1時間ほどで終了した。
大変お世話になった感謝を伝え、
私達は教室を出た。
同じ苦しみを抱えた親子たち
教室を出ると…
ドアからすこし離れたところに、
次を待つ親子がおられた。
同じ苦しみを味わってきたお母様…と息子。
あまり見ないようにしつつ、少し会釈をすると、
ハッと気付いたお母様も、会釈を返してくださった。
一瞬だけ見えた姿は、
息子が、母に背を向け壁を向いて立っていた。
お母様は、
その背に向けて静かに言葉をかけている、
そんな様子だった。
その親子は、私達のあと、
静かに教室へ入って行かれた。
そして、少し離れた位置にも、
もう1組の親子がいた。
そちらは、
不貞腐れた様子の息子が、
グングン先を歩くのを、
後ろから心配そうに付いて歩く
お母様の姿だった。
まだ16歳の息子たち
私は思った。
我が家も含め、皆、勝手な息子達。
自らの責任で留年となり、
散々親に迷惑をかけておきながら、
母へのこの態度。
だけど私は
そんな男子2人を見て、
可愛いなあと思ってしまった。
やっぱり、
まだ16歳なんだなよなあと。
親に迷惑をかけまくって生きてる。
そのくせ偉そうに。
優等生もいれば、
こんな風にくすぶってる子もいて、
まあ、色々いるんですよ、世の中。
ほんと、
体だけは大きく、母への態度もでかく、
それでも
まだまだ子どもなんだよなあ。
正しくばかりは、
自分をコントロールできない。
分かってるけど、勉強したくない。
ゲームしたい、遊びたい、寝たい。
まだ16歳、なんだよね。
母親にツンケンしている
その男子2人を見て、
私は、とても愛おしく感じた。
届かない言葉、変わらない息子
その場を少し離れたあと、
こちらもぐんぐん前を歩くそらまるに
「ほかにも2組…いたね。」
と声を変えると
「え?どこに?見てない。」
はい、全く周りを見ないそらまる、
これも16歳。
さて、担任のお話に
私は納得と感謝を感じましたが、
当の本人に念のため聞いてみた。
「先生のお話、少しは響いた?
自分自身の取り組み方を
これからは変えなさいって仰ってたよね?」
「んー。正直に言っていいの?」
「うん。」
「響きはしない。」
やっぱりか…。
「で?どうする?
今から売店で教科書買って、
家庭教師の先生に渡して予習してもらう?」
と、聞いてみると
「3月中は、勉強しない」
でたーーーーー!!!
ここまでしても、通常運転のそらまるだった。
「4月の授業が始まってからやる。
先生によって範囲違うんだから、
範囲もまだ分からないうちから
勉強するなんて、マジ無駄。」
※塾高は、教科書1ページ目から順番には進まず、
先生によって範囲が異なることによる、この発言。
そう簡単に、人は変わりません。
そう簡単に、そらまるには響きません。
「はあ。そうですか。
100歩譲るわ、4月からはやるのね?」
「うん。」
「これからの自分の取り組み方は?
考えてる?」
「言わない。」
「はあ。そうですか。
じゃ、お昼食べて帰ろ。」
どうせ、追及するだけ
無駄な時間になるので、さっさと引いた。
そらまるを育てている中で身につけた
「価値ある撤退」
というスキルを、私は最高レベルまで引き上げた。
これは長い年月を、経て経て経て、
そらまるに鍛えあげられた「スキル」
でございます。
留年が決まった日のランチ
きっと、はたから見たら
まさか、昨日留年が確定し、
今、学校に報告してきたとは
誰にも思われないであろう、
普通のテンションの親子ランチ。

でもね、
やっぱりハンバーグの味は、
いつもより美味しく感じなかったよ。
そして、食事を済ませたあと、
「じゃ、いってらっしゃい」と
そらまるを映画館の前で降ろした。
一見、いつも通りの母の顔だったけれど
頭の中の意識はどこか飛び気味だったらしい。
車を走らせてしばらくしてから、
ふと後部座席に向かって話しかけてしまった。
もちろん、そこには誰もいない。
思わず一人で苦笑いした。
そんな、三面談の一日でございました。
今読み返してみると、
当時の私は意外と普通でした。
絶望しているようで、
でもいつもの会話をしていて、
ハンバーグの味を気にしていて、
誰もいない後部座席に話しかけ苦笑いをし、
人はこんな風に、
人生の大きな出来事を通り過ぎていくのかもしれません。
そしてこの日、
「3月中は勉強しない」
と言ったそらまる。
範囲も分からないのに勉強するのは無駄だと。
では、そんなそらまるが
4月からどんな勉強をしていったのか。
その話を、次の記事に書こうと思っています。


