高校1年生の春、帰宅部を選び、ゲームばかりしていたそらまる。
そして、そらまるは留年し、
2回目の高校1年生を迎えました。
その4月のある日ーー
そらまるの帰宅が、いつもより遅い日がありました。
いつもは、16時という、
小学生並みに早い”ご帰還”の、帰宅部そらまる。
でも、その日は、18時ごろ帰ってきたのです。
帰宅したそらまるが、淡々と話すその内容に、
私は思わず、吹き出し笑ってしまいました。
※この記事は「帰宅部男子 第一話」の続きです。
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いつもの帰り道、思いがけない声がかかった
その日も、そらまるは、
6時間目の授業を終えると、
いつもの通り、まっすぐと、
銀杏並木を駅に向かい歩いていた。
そこで、ある人達から声をかけられた。
それは、1年生への部活の勧誘だった。
そらまるの口から出た、
その部活は、なんと!
「筋トレ部。」
私が正しく言い直そう。
それは、重量挙部!!!
先にお伝えしておくが、
そらまるは、もちろん、入部しなかった。
しかし、面白いものだ。
そらまるの人生に、
重量挙と交わる日が、ひとときでもあろうなど、
本人はもちろん、母も微塵も考えたことはなかった。
赤ちゃんの時から食が細く、
腹筋も腕立てもできず、
腕も足も棒のように細く、
横から見るとあまりの薄さに驚く、
そんなそらまるに、
重量挙!!!!
そらまるは、淡々とした口調で
話しを続けた。
「入る気ないですって言ったけど、
見るだけ見てくれって言うから、
見るだけならって言って、見てきた。」

皆さんを驚かせたそらまる
トレーニング室で、部員の皆さんと
あれこれ話す中で、
「新入生」という言葉を使われたそらまるは、
こう言ったそうだ。
「あ、僕は留年したんで、新入生ではないです。」
すると、
場が一瞬、静まった。
そらまるは、
「1年生?」と声をかけられたから、
「はい。」とだけ答えていたのだそうだ。
実にそらまるらしい…。
「え?じゃあ、ほんとは2年てこと?」
「俺らと同い年ってこと?」
「あー、まあ、そう。笑」
そこから、一気にみんなは、
どうしたら進級できるかを、
いろいろ話してくれたそうだ。
なんと優しい世界であろう。
教科の先生は誰?
その先生ならこういう対策するといい
俺の知ってる先輩も留年したけど、
次は進級できてた
「みんなから
「絶対大丈夫だからがんばれ」って言われた」
そうか。
部活の仲間とは、こういうものなのか。
しかし、こんな風に想いを馳せたのは、
もちろん、母だけだ。
本人は、そこらへんは、ドスルーである。
「でさ、そのあと、
めちゃくちゃ重いバーベル挙げてたよ。
筋肉見せて自慢してきたり、面白かった。」
そう言って、
いつも通り、ゲームをしながら、
バーベルではなく、
罵声をあげていた。
母には見えない水面下で、そらまるの変化は始まっていた
さて、私が ”帰宅部そらまる” を
やっと受け入れたのは、
そらまるが2年生に進級したころだった。
高校に入学して3年目だ。
そらまるは、変わらず、
毎日16時に帰宅し、ゲームをし、
勉強は”留年しない程度”にするようになっていた。
相変わらず、
寝る時間も2時3時、ときどき4時。
朝食も食べず、遅刻ギリギリときどき遅刻。
家での会話もゼロのまま。
夏休みは、毎日、昼過ぎまで寝ていた。
起きてくると、無言で準備をして、
昼まで汗を流した友人達と(部活)
川で待ち合わせて、
野球やサッカーで汗を流すそらまる(遊び)
外で体を動かして”遊ぶ”のは、
3度の飯より大好きなそらまるなのだ。
なんともかんともである。
なんともかんともではあったが、
私は、そらまるの毎日に
必要以上に口を出すことが
なくなっていた。
水筒を持たせ、
「いってらっしゃーい」と
お気楽に、日々見送っていた。
私はもう、そらまるに、
”母が思うちゃんとした高校生”を
求めなくなっていたのだ。
帰宅部という状況を受け入れられたのは、
そらまるに「こうであってほしい」を、
私が求めなくなったからだった。
親も子と一緒に成長する。
まさに、私は、
そらまるに、学びと成長を与えられた。
そんな2年生を終え、
そらまるが3年生に進級したときだった。
そらまるが、
Tシャツとハーフパンツを、
毎日持参するようになったのである。
変化は、あるとき突然始まるもの
そらまるが、あまりに毎日持参するため、
「洗い替え用に、もう1着買おうか?」
と、声をかけた。
なにしろ、そらまるは、
家では地蔵のように言葉を発しないため、
私は、自分なりに予想する習慣がついていた。
”3年生にもなると、
オシャレを意識して、体操着でなく、
自分のTシャツとハーフパンツで
体育の授業を受けるのか?”
そう思って、そらまるに
買おうかと声をかけたのである。
しかし、そらまるは「いらん」とだけ答えた。
「んー。。でも、体育の授業で着るんでしょ?」
そう言った私に、
「は?」
そらまるは、意味不明という表情をして、
そこで初めて、こう言った。
「昼休みに友達と、筋トレしてんだよ」
私は、非常に驚いた。
あの、そらまるが??であるからだ。
好きなことを見つけた。ただそれだけだった。
どういった経緯かは定かではない。
とにかく、クラスの友達と一緒に
筋トレをすることになったようだ。
そこから、毎日昼休みに
学校のトレーニング室に通うようになる。
一緒に始めたクラスメイトは、
すぐにやめてしまったようだが、
そらまるは卒業するまで通っていた。
土日や、休み期間中は、
近所の区民センターに毎日通い、
筋トレを続けていた。
そのうち、
地元の仲間たちも、
そらまると一緒に通うようになり、
大学生になった今でも、
学校から帰ってきたら、
そのまま着替えてトレーニングへ向かう。
ホネカワスジ丸だったそらまるも、
今ではもう、細マッチョである。
もう1つ
筋トレを始めてからは、
筋肉のために栄養を考えるようになった。
少食なうえに、朝が非常に弱く、
朝食を食べられなかったそらまるが、
自ら食べるようになった。
周りがどんなに、
健康について話して聞かせても
「食べたくない」でおしまいであったが、
本人の意識とは、ここまで強大である。
そらまるは、
最後まで、高校時代には、
部活動というものに属さなかった。
しかし、ある日、
自分の好きなことを見つけた。
誰に促されなくても、
トレーニングを欠かさなかった。
そして、周りにも影響を与え、
みんなをマッチョに変えた(笑)
そらまるは、
縛られる環境が肌に合わない。
好きなことしかやりたくない。
ただそれだけ。
そらまるが好きなもの。
友達との旅行。
公園や川で友達とやるサッカーと野球。
ゲーム。スポーツ観戦。
超長いお風呂。
車の運転。カラオケ。スノボ。
そして、筋トレ。
私は、そらまるに、
将来のためだけの行動ではなく、
今、好きで楽しいことをしながら、
大学生活を過ごしてほしい。
それが、勉強の子もいる。
資格取得を目指したい子もいる。
サークルや部活に全力の子もいる。
アルバイトの子もいるだろう。
そらまるが今、楽しんでいるのは、
趣味と、仲間との旅行と、遊ぶ時間だ。
今、やりたいことは、それぞれみんな違う。
でも、
子どもは、親にすべてを話さないだけで、
ちゃんと ”何か” を考えている。
”何か”が何なのかは、
無理に聞き出すものではなく、
本人が話したくなったときに、
私は全力で聞き、全力で応援する。
これが、
そらまるに何も求めなくなった私が、
たどり着いた在り方です。


