はじめに
私はこれまで、単発の個別相談をたくさん受けてきました。
お母さんたちにお伝えしてきたのは、いつも同じことです。
「子どもを変えようとしなくていいんです」
「整えるべきなのはお母さんの内側です」
でも、そう伝えても、しばらく経ってからまたメッセージが来ると、
以前と同じようにマイナスな捉え方に戻ってしまっていることが多かったんです。
単発相談の限界を感じた瞬間
その都度、その場では「なるほど」と理解されるのですが、
日常に戻るとまた、以前の“思考のクセ”が顔を出します。
私は気づきました。
「その人の“捉え方”そのものを変えないと、
子どもを見る目も、家族との関係も変わらないんだ。」
そこから私は、「3ヶ月間の伴走コース」を構想し、
まずは一人の友人にモニターをお願いすることにしました。
モニターのママとの伴奏
彼女の息子さんは中高生の頃、学校でたびたび問題を起こし、
担任の先生から電話が入るたびに、夫婦で学校へ謝りに行く——
そんなことが何度も繰り返されていました。
お母さんは次第に、
「なぜそんなことをしてしまったの?」と息子さんの心を知ろうとすることはなくなり、
ただ「またか」「いい加減にしてよ」と責めるようになっていきました。
その「またか」という言葉の裏には、
“前にもやった”“きっと今回も同じ”“この子はそういう子”という
過去の出来事の記憶と怒りが、すべて結びついていたのです。
そして、そんなお母さんからの「息子への信用のなさ」は
息子さんも敏感に感じ取っていました。
やがて彼は自分のしたことを話さなくなり、
なぜそうなったのかという本当の自分の心を語らず、
ご両親に怒られるがままに黙ってやり過ごすようになっていったのです。
ママの「息子を信用できない」という気持ちは、家の中の日常にも影響していました。
息子さんの何気ない言葉や行動にまでもイライラし
つい冷たい言葉を投げてしまう——そんな日々が続いていました。
息子さんの成績についても、
「勉強しないから成績が取れない」という、
”当然の結果であり、ただの現在の立ち位置”として受け止めることはなく、
「この子は頭が悪い」「もうどこの大学にも行けないだろう」という
思い込みへと変わっていました。
夫婦の会話も、
“どこの大学にも行けなかったらどうするか”という
不安や諦めの予想に包まれたものになっていました。
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私はこの友人をモニターとして1年間伴奏しました。
何か問題が起きるたびにじっくり話してもらい、
その中で彼女の「捉え方」を少しずつほぐしていきました。
起きた出来事をどう捉えるか、その時どんな言葉をかけるか。
それを一緒に練習していくうちに、
少しずつ息子さんへの見方が変わっていったのです。
モニターのママの変化
彼女は今ではもう、子どもを変えようとは思わなくなりました。
代わりにこう考えるようになったのです。
「すべての出来事は、私がどう捉えるかの問題なだけ。」
この意識の転換が起きてからは、子どもを責めることがなくなりました。
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ある日、塾の先生から息子さんの行いについて注意の連絡がありました。
「以前の私なら「またか!」と一瞬にして怒りが込み上げ、
すぐに問題として捉え、息子を責めていた。」
と彼女は断言しました。
けれど、このときの彼女は、こう考えたのです。
「先生が問題だと思っているその行動は、先生の捉え方であって
はたして本当にそうなのだろうか?
息子には息子なりの理由や感じ方があったのではないか?」
そしてこうも思いました。
「息子のことを一番よく理解しているのは、先生よりも母である自分のほう。
まずは息子の話をしっかり聞いてから判断しよう。」
彼女は物事を一歩引いて、客観的に見る力を身につけ始めていたのです。
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帰宅した息子さんに、そのようなフラットな心の状態で
彼女は穏やかに声をかけました。
子どもというのは、お母さんの気持ちを敏感に感じ取ります。
その日、息子さんは自分の気持ちを正直に話してくれました。
なぜそういうことをしてしまったのか、
その時自分はどんな思いだったのかを素直に話してくれたのです。
彼女も
「とにかく!理由はどうあっても
先生に注意されるようなことはしないで!」
という、これまでの切り捨てるような反応ではなく、
落ち着いて息子さんの感じ方や出来事の背景を一緒に話し合うようになりました。
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たとえば、こんな会話が生まれるようになりました。
「自分に対して敵意を持っての行動だと思うから、相手に腹が立つんだよね。
でも本当に相手に敵意があるかどうかは、相手の中でしか分からないこと。
問題は、自分の“捉え方”の中にあるんだよ。」
こうした会話を何度も重ねるうちに、
お母さんの落ち着いた視点が息子さんにも伝わっていきました。
息子さんはすぐにお母さんに心を開き始めました。
今まで話さなかった弱音を吐き出せるようになりました。
捉え方の変わったお母さんは、その弱音を
穏やかに受け止めることができるようになりました。
家で安心して弱音を吐けるようになると、
家族の中に、少しずつ笑顔と会話が戻っていきました。
子どもが弱音を吐いたとき
「自分で決めたことなら最後までやり切れ!」
「社会に出たらもっと厳しいんだ!」
「甘い!」
そんな風に”弱音を吐く我が子”にまずは親の強い思いを伝えた場合
子どもは外で受けたストレスを家で吐きだせなくなります。
「どうせ言ったら怒れられる、受け入れてもらえない」
そんな気持ちとなり、自分の中でため込んでしまう”癖”がつきます。
そして、子どもの心はどんどん疲弊していくのです。
疲れ切った心で、人間はやる気など起きず、体も頭も動きません。
必要なのは、まずは共感と労いと応援であり、そこで子供は心の充電をし、
また自分の意思で外の世界へ飛び出していくのです。
だから3ヶ月伴奏コースを作りました
単発相談ではなく、継続して寄り添うことで、
“捉え方の癖”を根本から整える。
それが、お母さんと子どもの関わり方への
本当の変化につながるのだと実感しました。
子どもを変えるのではなく、
お母さんが自分の捉え方を変えることで、
子どもの心が穏やかに変化し、家族が笑顔になっていく。
そのお手伝いをしたくて、
私はこの3ヶ月伴奏コースを作りました。

