中3の1月、早慶シミュレーションテストを受けました。
結果は、3科偏差値41。
今では、このテストは11月から1月にかけて3回行われると聞きますが、当時(2020年代前半)は、1月の半ばと1月末の2回のみの実施でした。
つまり、今よりかなり後ろのタイミングでやっと現実に気づかされたわけです。
それまでの息子は、模試の結果で常に”早慶再考圏”でも、早稲アカの先生たちにどんなに厳しく言われても「なんとかなる」と本気で思い込んでいて、受験勉強に向き合っていませんでした。
でも――
この1月半ばに実施された早慶シミュレーションテストの結果を見た1週間後。
塾の帰り道、車の中で息子がポツリとこう言いました。
「僕、早慶…不合格になるかも」
息子がようやく、”今の立ち位置”という現実に気づいた瞬間でした。
私は「なにを今更」「もう遅い」なんて全く思いませんでした。
むしろ「ついに来た!」と心の中でガッツポーズ。
ずっと待って、待ち続けていた”目覚め”がようやく訪れたのです。
「ここから親子でタッグを組んで頑張ろう!まだやれることはあるよ!」
車の中でそう伝えたあの夜を、私は今でも忘れません。
心は折れていないか、疲弊していないか
1月成人の日、早慶シミュレーションテストが実施された。
その結果の詳細の前に、このときの我が家の内情を先に説明させて頂く。
12月。
「もうそらまる君には、慶應義塾高校の対策はしない」
そう早稲アカの恩師から宣言された私は、
”ここから先は自分たちで、最後までやれることをやる”と決めた。
そして私は、すぐに慶應義塾対策をお願いするため家庭教師を探したのである。
なぜ私が「ここからは自分たちでやる」と決め、家庭教師を導入することになったのか。
その裏には、”先生と夫VS私”との大合戦がありました。
👉その夜の出来事を記した記事はこちら
12月末日、某家庭教師派遣センターから先生はやってきた。
名前は、早田先生。40代後半のがっちりした体育会系、ポジティブの塊であり、そして非常に誠実な先生であった。
体験授業は2時間である。
某家庭教師センターのシステムは、1時間3者面談、1時間授業である。私はせっせとリビングを大掃除し、お茶とお菓子を用意していた。
しかし、早田先生は来るなり「もう授業しちゃっていいですか?時間はないですから!」とおっしゃり、そのままそらまると部屋へ消えていった。
綺麗なリビングで待つこと終了5分前。早田先生は、5分だけリビングにやってきて三者面談をした。
部屋から出てきた二人のムードは和やかで、そらまるの表情はすがすがしく、やわらかかった。
リビングで席に着いた早田先生は、そらまるにこう言った。
「すごいね。計算がとにかく早い。
ひっ算を全くしないからヒヤヒヤしたけど、正解してるからそれでいんだな!笑」
そらまるは、「はい」と言った。
「早慶を受けるとき、計算が早いのは最強の武器です。
計算が遅い子は致命的です、なにしろ早慶の問題は、のんびり解いてる時間などないので。
そらまる、昔公文とかそろばんとかやってたの?」
「やってません。昔からひっ算をしないで解いていたら、こうなりました」
「え!我流であの速さ?すごいねー!」
そして、早田先生は、今度は私を見ながら続けた。
「そらまる君は、集中すると横に私がいるのを忘れてずっと考えるんです。
5分経ったから、そろそろ声かけて教えようかなと思うんですが、
あまりの集中力に15分待ってしました笑
大抵の子は横に私がいたら、流石に気を使い始めるものなのですが、
そらまる君は15分経ってもどこ吹く風で考え続けていました。
授業時間のこともあるので、15分で声をかけましたが
「もうちょっと待ってもらえないですか?」と笑。
自分で解きたい子なんですね。この粘りと集中力はいいですよ~。」
この話の最中、そらまるは無表情を装っていたが、どう見ても嬉しさが駄々洩れていた。
そして、早田先生は5分だけ3者面談をするとお茶を一気に飲み干し「そらまるならやれるよ」と言って帰っていった。
そらまるは、先生が帰るや否や
「僕は、小さい時から今までずっとママや先生たちから「ミスるからひっ算しろ」って注意され続けてきたけど、言うこと聞かないでやり続けていたら、何桁でも頭で計算できるように鍛えられたんだよねー。
やっぱ僕は正解だったんだな」
と誇らしげに言っていた。
もちろん、「すごい分かりやすかった。早田先生でお願いしていいよ」とも。
私は、某家庭教師派遣センターへすぐに連絡を入れた。「早田先生でお願いします」
実に久しぶりであった、そらまるが一切の否定もなく大肯定されたのは。
ひっ算を絶対しないことすら、否定されなかったのだから。
その後も早田先生は、受験の終わるまでついに1度も、そらまるのどんなことすらも肯定し続け、否定をしなかった。
その日の夜、早田先生からメッセージが届いた。
「塾からは、おそらく過去の合格不合格データから
”そらまる君の合格可能性”についてご家庭に指摘があったと思います。
中学生って、よっぽどの信念がない限り、
先生に「厳しいよ」って言われたら、そうなのかな~って
思ってしまうものだと思うのです。
お母様からの事前情報で、そのように内容を伺っていたので、
まずはそれとは逆のアプローチをして、そらまる君に
やる気と「出来るんだ」という気持ちを振るい立たせることが、
先決だと考えました。
まずはそこなんです。
出来るんだという思いがあるのとないのとで、
この残り1か月、そらまる君の吸収力と伸びに大きく関わってきます。」
そらまるの前でひたすら大肯定した早田先生のそこには、こういう意図があったのだ。
その後、何度か授業をしていくと
早田先生はそらまるの出来ている部分に大きく注目し、こう言った。
「大問1はもうできてるから、私の授業ではやらなくて大丈夫だな!
もう完璧に正解できるだろ?」
この一言が、そらまるの”とにかく大問1はミスしない”という気持ちに火をつけた。
そこからは過去問を解く際、大問1でミスすることが、ほぼなくなったのだ。
どんな言葉がその子の内なる火をつけるのか。
ここは神のみぞ知るところであり、親や教育関係者の永遠の悩めるテーマである。
その根底に必要なのは「君なら出来る」というその子自身を認め、そして、その子の持つ力や武器をそれがどんなものであろうと肯定することがなのであろう。
そして、受験に1番大事なのは心が折れていないかだ。
早田先生が体験授業の際に1番先に見る点がそこであると仰っていた。
メンタルが疲弊している状態では、集中力と吸収力が著しく低下するのだそうだ。
授業の効率が落ちるだけでなく、ラストスパートをきる余力が残っておらず、
へとへとで走り切れないのだと。
12月以降、心が折れていないか、疲弊していないか。
受験にとって、ここが大きなカギを握ると言っても過言ではない。
さて、早田先生と私は、さっそくLINE上で作戦会議を行い、
まず目標は、10日後に迫る”早慶シミュレーションテスト”へ向けることとなった。
冬期講習終了日から来ていただき、3日連続で早田先生の授業は行われた。
その2日後、そらまるは早慶シミュレーションテストへと出陣したのである。
早慶シミュレーションテスト、結果
結果は、惨敗であった。
数学 偏差値39
英語 偏差値56
国語 偏差値31
3科 偏差値41
この結果でのたった1つの救いは、
この結果をしても、そらまるの心は全く折れていないことであった。
しかし、皆さん。お分かりであろうか。
このたった1つの救いこそが、
実はなによりも大きな救いであるということを。
心が折れていないということは、まだ息切れをしていないということである。
まだまだ詰め込める余白が十分残っているということなのである。
即ち、追い込みをかけられる余力がまだ十分に残っているという状態なのである。
1月半ば、3年という長きに渡るレースもついに最後の直線に突入。
逃げ、先行、差し、追い込み、自在という5種類の受験馬たちが、
最後の余力を使って入試本番当日というゴールへ向かい、走る。
そらまるは、生粋の追い込み馬である。
逃げ、先行、そして天才である自在という
サラブレッドたちのお尻が遥か遠くに小さく見える。
しかし、どんなに離されても”折れないその心”だけが、
追い込み馬の持つ、
どの馬にも負けることのない”最強最大の武器”なのだ。
追い込み馬たちは、直線からが勝負だ!!!


